Report活動レポート

多民族国家で学んだコミュニケーション

小川理紗 高崎健康福祉大学(薬学部4年)

留学期間:
2020年2月29日~2020年3月29日
留学先:
カナダ
ILSC Vancouver, Budding Cildren’s Garden Daycare

多民族国家で学んだコミュニケーション

今回の留学では、まずは英語力向上のために語学学校で勉強すること、そしてチャイルドケアのボランティアを予定していました。新型コロナウイルス感染が広がっており、安全に留学を行うことができるのか、カナダへ渡航した後、無事に日本へ戻ることができるのかと不安もありました。しかし現在4年生であり、残りの大学生活または就職後に1ヶ月も留学を行うことは難しいと感じたため今回が最後のチャンスだと考え、行くことを決断しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響から、全ての日程を予定通りに行うことはできませんでしたが、1ヶ月の留学で得られたものはとても大きかったです。

個人の意思を尊重するチャイルドケアのボランティア

平日は午前にボランティア、午後に語学学校の授業を受けていました。ボランティアでは3~5歳の子どもたちのお世話をしました。カナダは移民が多く、ヨーロッパ系、アジア系、アフリカ系など多種多様な人種が集まっています。ボランティア先でも様々な国の子どもたちがいました。母国語が英語でない子も多くいましたが、親とは母国語、幼稚園の先生とは英語でやりとりをしていて、幼い子でも二カ国語を使い分けていることに驚きました。

日本の幼稚園と違うと思ったのは、個人の意思を尊重するところです。日本では読み聞かせの時間やお絵描きの時間、外で遊ぶ時間などが決められて、みんなで同じことをしている印象ですが、この施設では、それぞれが好きなことをやっていました。お絵描きがしたい子は先生に伝えると絵具とエプロンが用意されます。絵本を読んでほしいと思ったら近くにいる先生にお願いして、自然とみんなが集まってきていました。朝、幼稚園に来たら今日は外で遊びたいか、先生がひとりひとりに確認をします。そして時間になると希望した子を集め、外へ出て近くの広場へ行きます。個人のやりたい遊びが自由にできて、強制的に行動を統一させるようなことはありませんでした。

日本人は周りに同調し、みんなで協力して同じことをするのが得意だと思います。しかし一歩日本の外へ出ると、個人の主張がとても強く感じることが多くあります。協調的な日本人の性格は素晴らしいと思いますが、周りに合わせているだけでは真のコミュニケーションをとることは難しいのではと感じます。

カナダの幼稚園では、ひとりひとりのやりたいに大人がきちんと対応してくれ、個人の意思を大事にしている印象でした。このような環境は、自分の意見をしっかり持ち、相手に伝える能力を伸ばしやすいと感じました。日本では保育士不足という問題もあり、先生が子どもひとりひとりにまで目を配れないのかもしれません。しかしボランティア先では、子どもひとりあたりの先生の数が多く、みんなが違うことをやっていても常にそれぞれの行動を把握できる環境でした。

日本の大学の講義と雰囲気が異なる授業に驚き

語学学校では初日のクラス分けの後、2週間は同じクラスで授業を受けました。10段階の細かなレベル分けで配属されたため、自分と同じくらいの語学力を持つ人たちと一緒に勉強することができました。授業は日本での大学の講義とかなり雰囲気が異なりました。先生は学生に対してたくさん問いかけてきます。日本では学生たちは黙ってしまうことが多いですが、カナダでは生徒が積極的に自分の意見を言っており、学生が中心で先生はあくまで補佐的な位置にいました。

私が驚いたことは、同じレベルの子たちが、英単語の意味をあまり知らないのにも関わらず、とてもなめらかに英語を話していたことです。彼らは自分たちができないことを恥ずかしがらずにどんどん英語を使っているため、知らない単語が多くても、英語でのコミュニケーションをスムーズに行っていたのです。少しでも自信がないと話す事をためらってしまう私は、このような積極性を見習わなくてはと強く感じました。

総合的に問題を解決できる薬剤師になるために

将来、薬剤師として働くときに、様々な価値観を背景とした患者さんに接すると思います。さらに、医療者同士のコミュニケーションにおいても相手の立場を理解することや自分の意志を相手に伝えることは重要なことだと思います。意思疎通を怠たることは、人間関係をギクシャクさせるだけでなく、医療ミスにも繋がると思うからです。

日本での生活では相手が察するのを待っていたり、相手の立場を考えずに行動していたと感じました。多民族国家であるカナダでは、自身の主張をしっかりする一方で、相手の考えを知ろうとする姿勢が当たり前になっていたように思います。自分を押し殺して周りに従うのではなく、自分も発信し、周りの意見も受け止め、総合的に問題を解決できるような医療者になりたいです。